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共に作る商品

レッドソファ

中村琉晟

菅野柾治

 

主人公

  • 松崎(「松崎家具」の社長・35歳。車が好きで会社にも車で通勤している程。酒好き。起業してから10年でやっとヒット商品を作る。)

協力者

  • サカエモ(新聞記者 山岡 松崎が起業した頃からの付き合いがあり、松崎とよく飲みにいくほど仲が良く、松崎の良き相談相手でもある。)

  • 杉本さん・古川さん(アイデアを投稿してくれたユーザー)

敵対者

  • ヒット商品に乗っかり、代替品を売り始めたライバル企業


ストーリー

 松崎は、某大手家具メーカーに就職したが、3年で脱サラし、自分で会社を起業し株式会社「松崎家具」を立ち上げた。起業当初はヒット商品を出せずにいたが、10年で「体にフィットするソファ」を作り出し、それがネット上で「人をダメにするソファ」という別称で話題になり、一躍大ヒットした。
 様々なメディアからも取り上げられたり、起業当初から親しくしていた新聞記者の山岡にも大々的に取り上げてもらい、このまま会社の規模も大きくなっていくと思われたが,,

「松崎さん、やっと成功しましたね。今夜はパーっと飲みにでもいきませんか?」と山岡に誘われ、2人で飲みにいくことにした。
「もう10年にもなりますか?ここまでくるのにほんと長かったですね〜松崎さん」
「そうだな、起業当初から今までヒット商品が出せなかったのに、山岡さんに親しくしてもらってさ、記事にもずっと載せてくれて、もうほんと山岡さんのおかげだよ」
「これから、どんどん新しいことにチャレンジしていくんですかー?」
「いや、しばらくはこの『人をダメにするソファ』で安泰なんじゃないかなー笑笑」と松崎と山岡は浮かれ、その日は夜遅くなるまで2人で酒を交わした。


 しかし、喜んでいたのもほんのひと時で、ヒットの波に乗ろうと大手家具メーカーが自社製品よりもコスパの良い代替品を作り販売し始めた。大手ということもあり、代替品はすぐに世間に広まり、自社製品の影は薄まっていった。
そして自社製品の売れ行きが悪くなり、売り上げは先月の3割減にも減少してしまった。
 このままではまずいと思い、新たな商品を考えていたがなかなか思いつかず、頭を悩まされていた。
 普段は会社に車で通勤しているが、「人をダメにするソファ」が売れたことで浮かれていて、総額100万のカスタマイズを知り合いの車屋に依頼しており、車を預けていたため、会社から最寄りの高田馬場まで新しいアイデアを考えながら歩いていると、さかえ通りに入っていた。

 後で調べてみると、さかえ通りは午前中は学生街で学生で溢れ、飲食店が多いため、夜になっても、絶えず人の姿で溢れているという。すると、さかえ通りの清水川稲荷神社の前で足を負傷し倒れ込んでいる猫がいた。歩いてくる人が揃いも揃ってみて見ぬふりをするため、早く帰路に立ちたいところではあったが、松崎はその猫の手当てをしてあげた。すると猫は神社の裏の方へ姿を消してしまった。
 家に帰り、松崎は颯爽と冷蔵庫のビール缶を手に取り、1人で晩酌を始めた。酒を飲みながら松崎の口からは思わずため息が漏れた。「なんでこうなっちまうかなー」と大ヒットした時期を羨むと同時に、なんであの時にいろんなことにチャレンジしなかったんだろうなーという後悔もあった。
「結局は大手のブランド力かー」と大手にコスパの良い代替品を出され、自分が作りたいものを作っているだけでは上手くいかないのかなーと頭を悩ませ、その日は酔い潰れてソファで寝てしまった。

 次の日の夜、仕事終わりに山岡が行きつけと言っていた居酒屋「またたび」というお店に「行ってみてくださいよー!絶対いいことありますから〜」と言われ、松崎は「新しいアイデアを考えないといけないし、もう呑気に飲み歩いてる場合じゃないんだけどな〜」と思ったが普段と違う環境なら今までと違った良いアイデアが浮かぶかもしれないと思い、足を運んだ。店に入るなり松崎は、「生ビール1つ」と店員に頼み、席につく。ビールがくる間店内を見渡していると、『裏メニュー』と書かれたポスターを見つけた。
「常連が考えた裏メニュー?」

 この居酒屋では、常連が考えた裏メニューを期間をもうけて普通のメニューとして出しているという。そして、そのメニューの中から注文数が1番多かった料理を通常のメニューで出すといった、顧客参加型の方法をとっていた。
松崎はこの方法に関心を抱き、この方法なら消費者のニーズに合った商品を作れるのではないかと考えた。松崎は運ばれてきたビールを豪快に飲み干し、すぐさま「またたび」を後にし、会社に戻り、自社のホームページで「ものづくりコミュニティ」というサイトを立ち上げ、ユーザーからアイデアを募る顧客参加型のマーケティングを行うことにした。

「これなら大手にも負けない消費者のニーズにあった商品が作れるぞ」と、松崎には絶対の自信があった。久々に胸が高鳴り、作業に没頭した。その姿はまるでマタタビの匂いに興奮する猫のようだった。そして「ものづくりコミュニティ」のサイトを完成させるとそれと同時に激しい睡魔に駆られ、その日は会社のデスクで寝てしまった。

 そして次の日、会社は日曜日で休みだったが石崎は作業を始めた。「まず、このサイトの存在をどうやって知ってもらおうか」と考えていた。そこで石崎は急いで車のカスタマイズを依頼していた車屋に電話をかけた。
「もしもし、石崎だけど、預けてる車のカスタマイズって今からでもキャンセルできる?」「急にどうしたんですか?あんなに浮かれてカスタマイズ依頼してきたのに」
「状況が変わったんだよ、どうにかキャンセルできないかな?」
「まだ始める前だったんでできますよ」
「じゃあ、キャンセルってことで頼む。また車取りに行くときに連絡するから」と言って電話を切り、カスタマイズに使おうとしていた100万円をアイデアが選ばれたユーザーへの賞金にした。

「これで話題性は十分だ」と独り言を言い、次にものづくりコミュニティを知ってもらうためにTwitter、 Instagram、YouTube、TikTokで広告を出した。 

 とてつもない費用ではあったが、「これで成功しなければもう会社を畳むしかない」という覚悟で宣伝広告を流した。

 すると、1週間もしないうちに注目が集まり、1000件を超えるアイデアが投稿された。そして、その中でも人気の高かった杉本さんの「ソファの素材を使った枕」と古川さんの「ベットとしても使えるソファ」の2つで投票を行った結果、「ベッドとしても使えるソファ」に多くの票が寄せられた。そのアイデアをもとに「体にフィットするソファ」の素材を使ったソファベットを作り、販売した。すると、商品は一斉に注目を集め、「体にフィットするソファ」以上にヒットし、売り上げを伸ばした。
 そのあと松崎は山岡の行きつけであった「またたび」からヒントをもらったことのお礼を言いに山岡のもとに会いに行った。「また、山岡さんに救われましたよー、あの『またたび』っていう居酒屋がヒントになりました!本当にありがとうございます!」と山岡に行ったところ、「『またたび』?私そんなお店いったことないですよ?」と予想外の返しをされた。「何言ってるんですか、あんなにおすすめしてくれてたじゃないですか〜」
「え?名前すら聞いたことないですよ、多分人違いじゃないですか?」と言われてしまった。「まあ覚えてないみたいだしいいか」と思い、石崎は山岡を飲みに誘った。

 

 


 

灰色の子猫
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